空腹で目が覚める。熱いシャワーを浴びて昨夜の高級な酒を身体から抜く。品川のエグゼクティブタワーから下界に広がる霞む大都会を見下ろす。こういう時はフリフリチンチンに限る。夜景を見下ろすならバスローブにブランデーと、世間での相場は決まっているが、今は朝。
「確か朝食券があったな」とテーブルを確認。
「お客さまへ。本日窓の清掃をさせていただきます。」
慌てたエビのようにカーテンを閉める。まぁ見られて減るものでもナイが・・・
ブレックファストは和食を選んだ。しかしどうも喉が痛い。「やっぱり風邪なのか?いや酔ってホテルへ戻り、湿度管理をせずして寝てしまったからだ。」と自分に言い聞かせながら新聞を読む。行儀悪い食べ方をするもんだから、おかゆがドロっと落ちた。こんな時アセってはイケない。2面と3面の角をキッチリ合わせ、糊付けするように重ねた。
海苔といえば、朝食に付いてくる味付け海苔。僕はこの透明で両端ギザギザの袋を目の当たりにすると、どうしても最初の1枚を上前歯にくっつけて「ニタァ〜ッ」としたくなる衝動に駆られる。しかしここはホテルの朝食会場、しかも僕ひとりだ。こんな時は新聞を読んでおくのが無難だ。
体力回復にはまず食事。「おかゆ御膳」をすべて残さず食し、その場を後にする。
係の人から「お客さま!お部屋番号とサインをお願いします。」と声をかけられたので、持っていた新聞を口にくわえてチケットにサイン。
「どうもありがとうございました。」さすがのサービススマイルだ。僕はホテルマンをしていた経験上思うのだが、日本人はこの笑顔をもらった時、その「返し方」に馴れていない。まぁサービスする方に笑顔がない場合も多いのだが・・・
僕は当然「ニコッ」と軽く笑顔を返す。
その時である。新聞が・・・口から、上前歯から離れない。引っ張ったら音を立てて破れて・・・残りの角が歯に貼り付いた。向うは気付いていたのか?その笑顔が少しだけ変化したようにも見えたが、そのまま閉口しエレベーターホールへ向かった。こんな時はいつもよりゆっくり歩くのが無難だ。
「人間の願望は、突如として別の形で実現することがある。」 TOGGY